今年もまた10月からインフルエンザの予防接種を開始します。
世の中には予防接種が好きな人と嫌いな人がいますが、私は好きです。
なぜなら、注射嫌いの職員にも頭を下げてお願いして毎年2回の予防接種をしている当院では、こんな仕事をしている割には15年間で1名しかかかっておりません。
ワクチンのおかげだと思っています。
あまりお好きでない方の「科学的」な理由は
「ワクチンの有効率が30%と、低いから」
という事が中心になります。
しかし多くの方がこの「有効率」の概念を誤って捉えていらっしゃいます。
有効率30%を
「接種したうちの30%はかからない」
と誤って捉えてしまうと
「接種しても70%はかかってしまう」
という誤った結論に至ってしまいます。
有効率30%とは
「かかった人のうち30%はワクチンを打てばかからずに済んだ」
ということであり、ワクチン接種により重症化を防ぐことを考えると、
その背後には
「ひどい目にあった人の多くの部分はひどい目に会わずに済んだ」
ということになります。
ご存知のとおり、インフルエンザに感染すると「脳炎」「脳症」といった死にいたる合併症も起こすことがあり、
その多くは、発症に気づいた段階でそういった状況になっています。
インフルエンザの感染が引き金になって体内のバランスが大きく狂ってしまうこういった病態には、抗インフルエンザ薬の投与は既に無意味で、厳しい戦いとなります。
そういったことから、みなさんに「保険をかけましょう」とおすすめしている次第です。
小児科医という人種は、少なからず目の前でなすすべも無く亡くなって行くお子さんの姿を見ています。
一旦スイッチが入ってしまうとどんな高度医療を用いても抑えることができないものに対しては、予防することしか手立てがありません。
予防接種をして「かからなくてよかった」「軽く済んでよかった」と言ってもらえることはありませんが、それが「保険」というものです。